アスペルガー症候群ご本人様、カサンドラ症候群の方へ
~ アスペルガーかもしれない、カウンセラーからのメッセージ ~(2015年12月15日)
「アスペルガー症候群の根本的な治療法は、いまのところ確立されていません」という言葉を、耳にされたことがある方も多いのではないでしょうか。私自身も、聞くたびに、少し肩を落としてきました。
このページでは、私自身の経験と、日々の暮らしの中で見つけてきた工夫について、お話ししたいと思います。
はじめに
私(竹内成彦)は、プロの心理カウンセラーであると同時に、軽度のアスペルガー症候群の傾向を持つ者です。(専門医から正式に診断を受けました。軽いアスペルガー症候群であり、共感能力を持った珍しいタイプのアスペルガー症候群だと言われました。)生まれてから55年もの間、そのことに、ずっと気づかずに過ごしてきました。
あるとき、カサンドラ症候群でお悩みの方が、私のカウンセリングルームを訪ねてくださったことがきっかけで、アスペルガー症候群について学びを重ねるようになりました。学べば学ぶほど、「もしかすると、私自身も、そうなのではないか?」という思いが強くなり、ついに専門医に診てもらい、「自分はアスペルガー症候群なんだ」と、それを受け入れるようになったというわけです。実際、アスペルガー症候群の症状を和らげると言われる方法を、自分自身に試してみると、気分が穏やかになり、心が落ち着くのを感じました。
アスペルガー症候群とは
ひとことで言うと、「知的な発達に遅れは見られないものの、コミュニケーションや興味の持ち方に大きな偏りがあり、それによって、日常生活にさまざまな支障が生じている状態」を指します。「空気が読めない」「だらしがない」「鈍感」といった言葉で語られることもありますが、私自身は、コミュニケーションに大きな困難を感じているわけでもなく、生活に大きな支障が出ているわけでもなく、空気を読むことも、丁寧に過ごすことも、人一倍できているほうだと感じています。ですから、自分がその傾向を持っていることに、長い間、気づかずにいたのだと思います。
一般的には、次のような特徴が挙げられることが多いです。
・発達障害のひとつで、社会性、コミュニケーション、想像力の面に特性がある
・人の輪の中で浮いてしまう、暗黙のルールがつかみにくい、話し方が独特になりやすい
・表情や身振り、声の抑揚、姿勢に独特さがある
・親しい友人関係を築きにくい
・冗談や比喩、皮肉を読み取るのが苦手
・興味の対象が独特で、特定のものへの強いこだわりを持つことがある
・身体の使い方にぎこちなさが見られることもある
私が、自分にもその傾向があるのではないかと感じた理由は、主に下記の4つの「敏感さ」です。
私自身の、4つの敏感さ
① 触覚過敏(洋服のタグが気になる) 私は、いつも下着を裏返して着ています。縫い目の感触が気になって仕方がないからです。ぴったりとしたズボンやシャツを着ると、大きな苦痛を感じます。ダボダボのズボンや、着古してくたびれたしたシャツのほうが好きです。糊のきいたカッターシャツは苦手ですし、お風呂上がりに服を着ること自体、あまり好きではありません。急に人に触れられると、とても驚いてしまいます。
② 聴覚過敏(音に敏感に反応してしまう) 賑やかな場所では、人とうまく話せなくなります。周囲の音が大きすぎて、相手の声が耳に入ってこなくなるからです。時計の秒針の音が、耐えられないほど気になります。咳払いや、鼻をすする音も、とても苦手です。
③ 嗅覚過敏(タバコの匂いを強く嫌う) タバコの匂いが、とても苦手です。コンビニの前を通る時は、灰皿が置いてあることが多いので、思わず息を止めて歩いてしまいます。香水の匂いも、あまり得意ではありません。
④ 視覚過敏(貧乏ゆすりが気になる) 蛍光灯がちらつき始めると、思わず顔をしかめてしまいます。視界の中で、誰かが貧乏ゆすりをしていると、気になって仕方がなくなり、「やめてほしい」と、つい思ってしまいます。
思い返してみると、私はもともと、人とのコミュニケーションが得意なほうではありませんでした。今の私があるのは、幼い頃から、人と関わるということに、人一倍意識を向けて、努力を重ねてきたからだと思っています。ありがたいことに、今では、話すことも、聴くことも、得意なほうだと言っていただけるようになりました。
※上記をお読みになられた方の中には、「竹内さんは、HSPじゃないの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。でも、この文章を書いた2015年頃は、まだそのような概念はなかったし、私の過敏さは、HSPという言葉で片付けられるほど生易しくはないです。
よくある誤解について
ここで、多くの方が抱いている誤解について、少しお話ししたいと思います。
「アスペルガー症候群の方は、怠け者で、鈍感である」というのは、大きな誤解です。もちろん、そうした傾向をお持ちの方が、全くいらっしゃらないわけではありませんが、どちらかと言えば少数です。多くの場合、鈍感というよりも、むしろ敏感なのです。「脳も、身体も、驚くほど敏感」というのが、実感に近い表現だと思います。そして、その敏感さゆえに、周囲に理解されにくいという苦しさを、抱えていらっしゃる方が、少なくないのです。
私自身が行ってきた、生活面での工夫
私自身、これまでたくさんの本を読み、学びを重ねてきました。そのうえで、あらためて思うのは、「では、どう生きていけばいいのか?」という、具体的な方向性が大切だということです。「あなたは、人に迷惑をかけているんだよ」と言われるだけでは、辛くなるばかりです。誰よりも苦しんでいるのは、本人自身だと、私は感じています。
そうした中で、私が特に心がけてきたのは、次のようなことです。
① 自分の個性を受け入れること
どうぞ、その傾向を持つ自分を、否定せずに受け入れてあげてください。得意なことと、苦手なことを、少しずつ知っていくことが大切です。どうか、自分自身を嫌いにならないでいただきたいと思います。
② 栄養をしっかり摂ること
アスペルガー症候群の傾向をお持ちの方は、脳が疲れやすいと言われています。ですから、意識して、栄養をしっかり摂ることをお勧めします。正直なところ、食事だけで必要な栄養を十分に摂るのは、なかなか難しいと感じています。私自身は、サプリメントも積極的に取り入れるようにしています。
③ 胃腸に負担をかけないこと
暴飲暴食は、できるだけ避けていただきたいと思います。特に、食べすぎには注意が必要です。冷たいものも、なるべく控えめにするとよいでしょう。栄養はしっかり摂りながら、カロリーの摂りすぎには気をつける。そのバランスが大切です。
④ 身体に良いものを、意識して食べること
何が身体に良いかは、あらためて説明しなくても、多くの方が、感覚的にご存じのことと思います。できるだけ、小さなお子さんやご高齢の方が口にしても安心できるような、自然に近いものを選ぶようにしてください。カフェインやアルコール、砂糖の摂りすぎには、少し気をつけていただくのが賢明です。身体に悪い食べ物は、なるべく食べないよう気をつけてください。
⑤ 積極的に運動療法を行うこと
私は、哀しきかな、運動が嫌いです。でも、筋トレもしますし、山登りにも行きますし、日頃からよく歩くように心掛けています。これは、ひとえに自分の脳の働きをよくするためです。
ちょっと息がきれる、もしくは汗をかく、程度の運動(ウォーキング・ジョギング・筋トレ・ヨガ)を、週に3回以上、20~30分程度することを習慣にすると良いでしょう。
⑥スマホやゲームをやり過ぎないこと。
スマホやゲームをやり過ぎると、脳が想像以上に疲れます。そう、生活の質や、症状の目立ち方に、間接的に影響を及ぼすのです。よって、使用時間は、どうぞご注意ください。そうですね。長くとも、1日2~3時間ぐらいが適切かと思います。
以上、6つ、お伝えしました。
これらは、あくまで、私自身が試してきて、心地よさを感じている工夫です。効果の感じ方には、個人差があることも、あわせてお伝えしておきたいと思います。
最後に、大切なメッセージ
アスペルガー症候群の傾向をお持ちの方へ。
そして、カサンドラ症候群でお悩みのご家族の方へ。
どうぞ、私のカウンセリングルームの扉を叩いてみてください。あなたの抱えていらっしゃる苦しさを、私が、しっかりと受け止めます。誰かに、その苦しさを受け止めてもらえたという経験は、きっと、これからの人生を、前向きな気持ちで歩んでいくための、大きな支えになることと思います。
どう生きていけばいいのか、周囲の方とどう接していけばいいのか。私が、具体的なご相談に、一緒に向き合わせていただきます。同じような敏感さを持つ者として、そして数多くの臨床経験を積んできたカウンセラーとして、あなたのお力になれることが、きっとあると思っています。カウンセリングのお申し込みは、こちらからお願いいたします。
追記(2026年08月23日)
医学的には、現在「アスペルガー症候群」という診断名は、「自閉スペクトラム症(ASD)」という、より広い枠組みの中に統合されています。厳密には、「アスペルガー症候群」という呼び方は、今の診断基準の中では使われなくなっています。
それでも、このページでは、あえて「アスペルガー症候群」という言葉を使わせていただきました。まだ世の中に広く浸透している呼び方であり、「自閉スペクトラム症」と言うよりも、ご自身やご家族の状態を、直感的にイメージしていただきやすいのではないかと考えたためです。どうぞご了承ください。
