不登校に悩む保護者の方へ|公認心理師からのメッセージ
「学校に行きたくない」「うちの子が不登校になってしまった」——そう悩む保護者の方に向けて、公認心理師として28年、18,000件以上のカウンセリングに携わってきた立場から、不登校についての考え方と、私が大切にしている支援のスタンスをお伝えします。
不登校についての考え
「休んでいいよ」という言葉の重み
「学校に行かなくてもいいんだよ」——この言葉に、これまでどれほど多くの親子が救われてきたことでしょう。心が限界に達しているお子さんにとって、それは命を守り、心を守るための大切な言葉です。私はその優しさを、決して否定するつもりはありません。
ただ、長年の臨床経験の中で強く感じてきたことがあります。それは、この言葉が「言いっぱなし」になってしまう危うさです。「少し休む」はずが、いつの間にか数ヶ月、数年と時間が過ぎてしまう。時間が経つほど、もう一度動き出す一歩は重くなります。「休んでいいよ」と選択肢を渡したなら、そこで終わりにせず、「一緒にどうやってまた歩き出そうか」と考え続けること。それが、その言葉を伝えた大人の責任だと考えています。
「対処の言葉」と「防止の言葉」は別物
不登校についての言葉には、大きく二種類あります。ひとつは、すでに苦しんでいる子を守るための「対処の言葉」。もうひとつは、まだ通えている子がこれから不登校にならないための「防止の言葉」です。この二つは、SNSやメディアではしばしば混同され、現場を混乱させているように感じます。
すでに苦しんでいる子に「休んでいい」と伝えるのは、大切な対処です。しかし、まだ学校に通えている子に、防止の文脈でこの言葉を強調しすぎると、
- ストレスに向き合う力を育てる機会が減る
- 困難を避けるクセがつきやすくなる
- 学校に行く意味そのものが希薄化する
といった副作用が生まれる可能性があります。対処としては正しくても、防止としては機能しない。この区別を丁寧にすることが、混乱を防ぐ第一歩だと考えています。
学校が育てる「困難を乗り越える力」
学校は、ただ勉強をする場所ではありません。友だちとの小さな衝突や、そこから仲直りする経験。先生との何気ない会話。少し騒がしくて、ままならない場所で過ごすこと自体が、生きづらさを乗り越える「力」を育ててくれます。「通いながら、ゆっくり元気になっていく」という道も、お子さんにとって大きな支えになり得ます。
私自身、小中学校の頃、毎朝玄関で吐いてしまうほど学校に行きたくありませんでした。ランドセルが鉛のように重く感じられ、学校へ向かう道を歩くたびにつらい気持ちになった記憶があります。それでも歯を食いしばって通い続けた日々は、大人になった今の私を支える大きな財産になっています。だからこそ私は、「学校に行かないこと」そのものを安易に肯定する立場は取りません。
見極めが何より大切
もちろん、どんな状況でも「無理にでも行くべきだ」と言いたいわけではありません。いじめや、心身の不調、特性による集団生活の困難を抱えている場合は、まず心と身体の安全を確保することが最優先です。ただ、それは「学校なんて行かなくていい」と安易に一般化してよい理由にはなりません。何が苦しいのかを丁寧に見極めながら、可能な限り「社会や学びの場」とのつながりを、細くても維持していくこと。それが、長い目で見てお子さんの人生を守ることにつながると信じています。
支援のスタンス
私は、二つのメッセージを明確に使い分けることを支援の軸にしています。
一つは、社会全体に向けた「規範」のメッセージです。毎日頑張って学校に通っているお子さんたちの努力は、社会性・忍耐力・学習の基盤という、将来の自立に不可欠な力を築いています。まずはその努力をしっかりと肯定したいのです。
もう一つは、深刻な苦しみの中にいる子への「個別配慮」のメッセージです。「無理して行かなくていいよ」は、皆に向けて声高に発する一般論ではなく、専門家や保護者がそっと寄り添い、回復を最優先する場面で個別に届ける言葉だと考えています。
不登校支援の本質は、「一時的な休息」から、その子なりの「社会的な自立」へと確実につなげていくことにあります。単に学校に行かないことを擁護するのではなく、その後の学習・社会性・進路について、責任を持って伴走すること。私は、学校や専門家と手を取り合い、お子さんを孤独にさせないこと、そして無責任な一般論に振り回されず、目の前のお子さんに何ができるかを問い続けることを大切にしています。
カウンセリング案内
不登校は、原因も背景も、お子さんによって一つひとつ違います。「行かせるべきか、休ませるべきか」という二択ではなく、今このお子さんに何が必要かを、一緒に見極めていくことから始めませんか。
名古屋市中区(金山駅近く)のルーム、またはオンライン(Zoom)にて、来談者中心療法をベースにしたカウンセリングを行っています。保護者の方おひとりでのご相談も、お子さんとご一緒のご相談も承っております。不登校のお子さんへの向き合い方に迷われている方は、まずはお気軽にご相談ください。「言いっぱなし」で終わらせず、その先の一歩まで、一緒に考えていきたいと思っています。
